日本政策金融公庫と自治体融資、創業融資でどちらを選ぶべきか?
2025/02/28
日本政策金融公庫と自治体融資、創業融資でどちらを選ぶべきか?
創業時の資金調達は、事業の成功に大きな影響を与えます。特に、日本政策金融公庫と自治体融資のどちらを利用するかは、多くの起業家が悩むポイントです。それぞれの融資制度には異なる特徴があり、適切な選択をするためには、融資の条件や審査の通りやすさ、メリット・デメリットを把握することが重要です。
本記事では、日本政策金融公庫と自治体融資の違いを詳しく解説し、どちらが自分の事業に適しているのか判断できるようにサポートします。さらに、両方の融資を併用することが可能かどうかについても触れていきます。
日本政策金融公庫の創業融資とは?
日本政策金融公庫(JFC)は、政府系金融機関として全国の中小企業や個人事業主に対して融資を提供しています。特に創業時の資金調達において、多くの起業家が利用する選択肢の一つです。JFCの創業融資は、無担保・無保証人で借りられる点が特徴で、自己資金が少ない起業家でも利用しやすい仕組みとなっています。
また、審査基準も比較的柔軟で、事業計画書の内容がしっかりしていれば融資が通る可能性が高いとされています。通常、融資の申し込みから実行までの期間は約1ヶ月と比較的短く、早めに資金調達をしたい場合にも適しています。
日本政策金融公庫の融資条件と特徴
日本政策金融公庫の創業融資には、以下のような特徴があります。
1. 融資額
- 最大3,000万円(うち運転資金は1,500万円まで)
- 一般的な創業者向け融資は500万円~1,000万円程度が多い
2. 審査基準
- 事業計画書の内容が重要(市場調査・売上予測の妥当性が評価される)
- 自己資金は創業資金の1/10以上が必要(自己資金が多いほど審査に有利)
3. 金利
- 比較的安定した固定金利(一般的には1~2%程度)
- 金利は個々の審査状況や政策によって変動する
4. 返済期間
- 設備資金:最長20年(据置期間5年以内)
- 運転資金:最長7年(据置期間3年以内)
5. メリット・デメリット
✅ メリット
- 無担保・無保証人での借入が可能
- 比較的審査が通りやすい
- 事業計画書がしっかりしていれば創業初期でも借りやすい
❌ デメリット
- 自己資金が必要(最低でも1/10以上)
- 金利が自治体融資より高めになることがある
- 事業計画書の作成が求められるため準備が必要
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自治体の制度融資とは?
自治体の制度融資は、各地方自治体が地域の中小企業や創業者を支援するために提供する地域密着型の融資制度です。この融資は、地域経済の活性化を目的としており、低金利や各種補助制度が充実している点が大きな特徴です。例えば、信用保証料の補助や利子補給制度が組み込まれている場合が多く、実質的な返済負担を大幅に軽減できるメリットがあります。
また、自治体融資では、申請プロセスの一環として経営相談や面談が実施され、事業計画の具体性や実現可能性が厳しく評価されます。これにより、審査に通過するためには、事業計画の質が非常に重要となります。申込手続きや書類の準備に時間がかかるため、急ぎの資金調達には向かないこともありますが、地域の特性やニーズに即した柔軟な支援が受けられる点は、地域密着型ビジネスを展開する起業家にとって大きな魅力です。さらに、自治体によっては特別な優遇措置が設けられている場合もあり、地域ごとの事情に応じた支援が期待できます。
自治体融資のメリット・デメリット
メリット
- 低金利設定: 自治体融資は、他の金融機関に比べて非常に低い金利が適用されるため、長期的な返済負担が軽減されます。
- 各種補助制度: 信用保証料や利子補給制度が用意され、実質的なコストを大幅に下げる効果があります。
- 地域支援: 地域の発展を目指す施策として、地元企業や創業者に対して独自の支援プログラムが展開されており、地域特性に合ったサポートが受けられます。
デメリット
- 融資額の制限: 一般的に融資額は日本政策金融公庫の融資に比べて低額で、必要な資金全額を賄えない可能性があります。
- 審査と手続きの煩雑さ: 申請にあたっては経営相談や面談が必須となり、書類準備や審査プロセスに時間を要するため、迅速な資金調達が難しい場合があります。
- 保証人の要件: 場合によっては、経営者個人の連帯保証が求められることがあり、事業失敗時のリスクが高まる可能性があります。
このように、自治体融資は低金利や各種補助制度といった魅力的なメリットを持ちながらも、手続きの煩雑さや融資額の制限といったデメリットが存在するため、起業家は自身の事業計画や資金ニーズに応じて慎重に選択する必要があります。
項目 |
日本政策金融公庫 |
自治体融資 |
対象 |
全国の創業者・中小企業 |
各自治体の地域内の創業者・中小企業 |
融資額 |
最大3,000万円(運転資金は1,500万円まで) |
数百万円程度(200万〜300万円が一般的) |
金利 |
1〜2%程度(政策により変動) |
さらに低金利(利子補給制度がある場合も) |
返済期間 |
設備資金:最長20年、運転資金:最長7年 |
自治体ごとに異なる(5〜10年程度が多い) |
審査期間 |
約1ヶ月 |
約2ヶ月以上 |
審査基準 |
事業計画書が重要、自己資金は1/10以上必要 |
事業計画・経営相談・面談が必要 |
保証・担保 |
原則として無担保・無保証人 |
保証人や信用保証協会の利用が必要な場合が多い |
メリット |
・高額の融資が可能
・審査が比較的早い |
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どちらの審査が通りやすいのか?
創業融資を申し込む際に、多くの起業家が気にするのが審査の通りやすさです。日本政策金融公庫と自治体融資では、審査基準やプロセスが異なります。それぞれの特徴を理解し、どちらが自分にとって有利なのかを判断しましょう。
日本政策金融公庫の審査基準と特徴
日本政策金融公庫の審査は、事業計画書の内容と自己資金の割合が特に重要視されます。具体的なポイントは以下の通りです。
✅ 審査のポイント
- 自己資金は創業資金の1/10以上が必要(多いほど審査が有利)
- 事業計画書の整合性・実現可能性が評価される
- 過去の借入状況や信用情報もチェックされる
- 法人・個人事業主ともに同じ基準で審査
- 審査期間は約1ヶ月と比較的短い
日本政策金融公庫は、事業計画がしっかりしていれば通りやすいとされています。特に、事業の見通しや収益性が明確であれば、審査に通る可能性が高くなります。
✅ 通りやすくするための対策
- 自己資金を増やす(できれば創業資金の1/3程度あると有利)
- 事業計画書の市場調査や売上予測を具体的にする
- 過去の金融事故(クレジットカード延滞など)を避ける
自治体融資の審査基準と特徴
自治体融資の審査は、信用保証協会の保証が必要なケースが多く、より厳格な審査が行われます。ポイントは以下の通りです。
✅ 審査のポイント
- 事業計画書の内容に加え、経営相談や面談が必須
- 信用保証協会の保証を受けるため、個人信用情報が厳しく審査される
- 過去の借入状況や返済履歴が重視される
- 自治体によっては、創業後の経営安定を重視し、長期的な支援を行う
- 審査期間は約2ヶ月以上と長め
自治体融資は、信用保証協会の関与により、金融機関側のリスクを軽減する仕組みになっています。しかし、その分、申請者の信用力がより厳しくチェックされ、場合によっては連帯保証人の提出を求められることもあります。
✅ 通りやすくするための対策
- 信用保証協会の基準に合わせて事業計画を整える
- 自己資金を確保し、借入希望額を適切な範囲に抑える
- 事業の継続性や地域貢献の観点からアピールポイントを整理する
結論:どちらが通りやすいのか?
項目 |
日本政策金融公庫 |
自治体融資 |
審査のスピード |
約1ヶ月 |
約2ヶ月以上 |
事業計画書の重視度 |
重要(特に収益性) |
重要(事業の持続性や地域貢献) |
自己資金の必要性 |
創業資金の1/10以上 |
創業資金の1/10以上が望ましい |
信用情報の影響 |
影響あり(過去の金融事故は不利) |
影響大(信用保証協会の審査あり) |
保証人・担保 |
原則不要 |
必要な場合が多い |
✅ 通りやすいのは?
- 早く資金を確保したいなら → 日本政策金融公庫
- 低金利や保証制度を活用したいなら → 自治体融資
それぞれの審査基準を理解し、自分の事業や資金状況に合った選択をすることが大切です。
— Content Part —
両方の融資を受けることは可能か?
日本政策金融公庫と自治体融資は、それぞれ異なる制度ですが、同時に申し込むことは可能です。両方の融資を活用することで、必要な資金をより多く確保できるメリットがあります。ただし、併用にはいくつかの注意点があります。
併用する際のポイント
✅ 申し込み順序を考える
- 日本政策金融公庫を先に申し込む方が有利
- 公庫の融資が決まると、自治体融資の審査で「他の融資を受けている」という信用材料になる
- 自己資金と合わせて資金計画が明確になる
- 自治体融資を先に申し込む場合
- 自治体の融資額が少額なため、大きな資金調達には向かない
- 信用保証協会の審査があるため、手続きが煩雑
✅ 借入金額のバランスを取る
- 過剰な借入は審査に悪影響を及ぼす可能性がある
- 収支計画に対して借入額が大きすぎると、返済能力が疑われる
- 計画的に資金を調達することが重要
✅ 各制度の条件を確認する
- 日本政策金融公庫の融資を受けた後、自治体融資を申し込む際に「すでに他の融資を受けているか」の確認が入る
- 自治体によっては、他の融資との併用を制限している場合もある
併用のメリット・デメリット
項目 |
メリット |
デメリット |
資金調達 |
必要な資金をより多く確保できる |
借入総額が増え、返済負担が増加 |
金利 |
自治体融資を活用すれば、低金利での借入が可能 |
日本政策金融公庫の金利より自治体融資の方が低いため、最適な配分が必要 |
審査 |
一方の融資が通ると、もう一方の審査にも良い影響を与えることがある |
片方の融資が断られると、もう一方の審査にも影響する可能性がある |
手続き |
必要に応じて複数の資金調達手段を確保できる |
書類準備や審査が煩雑になり、時間がかかる |
結論:併用は可能だが慎重に計画を立てるべき
✅ 併用が向いているケース
- 日本政策金融公庫の融資だけでは資金が不足する場合
- 自治体融資の低金利を活用して、返済負担を軽減したい場合
- 創業計画がしっかりしており、審査に通る見込みが高い場合
❌ 併用が向いていないケース
- 返済計画が不明確で、借入額が過大になりやすい場合
- 審査の手間や時間を短縮したい場合
- すでに信用情報に問題がある場合(審査落ちのリスクが高まる)
適切な資金調達戦略を立て、両方の融資を上手に活用することが重要です。
— Conclusion Part —
創業時の資金調達、どの融資を選ぶべきか?
日本政策金融公庫と自治体融資は、それぞれ異なるメリットとデメリットを持っています。創業時の資金調達を成功させるためには、自身の事業計画や資金ニーズに合った融資制度を選択することが重要です。
選び方のポイントをまとめると、以下のようになります。
✅ 日本政策金融公庫が向いている人
- 高額の融資を希望する(最大3,000万円)
- 無担保・無保証での借入を希望する
- 比較的早く資金を調達したい(審査期間約1ヶ月)
- 事業計画書をしっかり準備できる
✅ 自治体融資が向いている人
- 低金利で融資を受けたい(利子補給制度あり)
- 信用保証協会を利用して融資を受けるのが可能
- 地域密着型の事業を展開する予定
- 審査の長さ(約2ヶ月)に耐えられる
✅ 両方の融資を併用すべき人
- より多くの資金を確保したい
- 日本政策金融公庫の審査に通った後、自治体融資を活用したい
- 低金利の自治体融資を利用して返済負担を軽減したい
最適な選択をするために
どちらの融資を利用するか迷った場合は、まず日本政策金融公庫での融資を検討し、足りない分を自治体融資で補うという方法が一般的です。ただし、自治体融資には信用保証協会の審査があるため、時間や手間を考慮して慎重に申し込む必要があります。
創業時の資金調達は、事業の成長に大きな影響を与えます。自身の状況や事業計画に合わせて、最適な融資制度を選びましょう。
この記事の監修者
井崎忠弘
株式会社ハッピー・メンター 代表取締役社長
資格・所属:行政書士、CFP(上級ファイナンシャルプランナー)、一般社団法人融資コンサルタント協会 会員
大学を卒業後、大手人材派遣会社に入社。2006年に独立し、現在は会社経営者として活躍する傍ら、行政書士やCFPとしても多岐にわたり活動中。
経営コンサルティングや融資支援、補助金申請のサポートを行うプロフェッショナル。